MRIに関する略語

最近のカルテではMRIの所見がよく記載されているが,MRI用語はまだ市販の医学辞書に掲載されていないものが多い。しかし,MRI所見は放射線科の医師が読影し,その結果を他科の医師(主治医)に向けて報告するのが通例のようで,放射線科だけで通用するような専門用語はそれほど多くない。私が遭遇した主な略語を以下に列挙する。

AX:axial sectionの略 軸位断,水平断
B-FFE:balanced-fast field echoの略 正式な日本語訳は見つけられなかった。
DR:dynamic range の略 ダイナミックレンジ
FLAIR:fluid attenuated inversion recoveryの略 正式な日本語訳は見つけられなかったが,「フレア画像」「フレア撮像」あるいは単に「フレア」と,略語の読みで用いられることが多いようだ。IR(inversion recovery,反転回復法)の一種らしい。
FSE:fast spin echoの略 高速スピンエコー
high:high intensity(またはsignal)areaの略 高信号域
low:low intensity(またはsignal)areaの略 低信号域
SAG:sagittal sectionの略 矢状断
SE:Spin Echoの略 スピンエコー
SI:signal intensityの略 信号強度
T1WI:T1 weighted imageの略 T1強調画像
T2WI:T2 weighted imageの略 T2強調画像

MRI用語に関しては充実したサイトがグーグル検索ですぐに見つかるので,詳しい意味はそちらで確認していただきたい。
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# by charttranslator | 2005-04-12 21:30 | カルテ解読のヒント | Comments(0)

ガーゼ(包帯)交換

外傷後や手術後にはガーゼ(包帯)交換を示す略語がよく見られる。
GWがGaze Weckselの略であることは有名だが,VW(Verband Wecksel),GC(gauze changing),DC(dressing change),CD(changing dressing),GE(gauze exchange)なども用いられる。また,「G交」という表記も多い。
ドイツ語で「交換する」という意味のaustauschenを略してAUSとしているカルテもある。アウスと言えば一般的には人工妊娠中絶(Ausraeumung,aeはaウムラウト)のことを指すので,最初はびっくりした。患者は男性だったので。

〔例〕aus:wound wet → ガーゼ交換:創部は湿潤
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# by charttranslator | 2005-04-09 11:49 | カルテ解読のヒント | Comments(0)

理学療法の略語

理学療法にまつわる略語は市販の医学略語辞典に載っていないことが多い。

MSEはmuscle strengthening exerciseの略で,筋力増強訓練
AKAはarthrokinematic approachの略で,関節運動学的アプローチ
Trはtractionの略で,牽引
dyjocはdynamic joint control(training)の略で,動的関節制動訓練
DFMはdeep friction massageの略で,深部摩擦マッサージ
STMはsoft tissue mobilizationの略で,軟部組織モビライゼーション(軟部組織モビリゼーション)
STMはsoft tissue manipulationの略という説もあるが,その正式な日本語訳は知らない

例えばカルテの理学療法の箇所に,P:MSE,AKA,pully と書いてあったとしたら

プログラム:筋力増強訓練,関節運動学的アプローチ,プーリー運動

という意味である。

医師がカルテによく用いるSOAPのPはプラン(治療計画)だが,理学療法でのPはプログラムを指すことが多いようだ。
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# by charttranslator | 2005-04-06 23:26 | カルテ解読のヒント | Comments(0)

圧をかけたら圧痛

カルテではTd(TD),Tn(TN),De(DE),Ds(DS)など,圧痛を示す略語が多く見られる。
Td,Tnはtendernessの略語,DeはDruckempfindlichkeit,DsはDruckschmerzの略語である。
略語だけが単独で出てくるとわかりにくいが,圧痛のある部位が併記されていることが多い。
あるいは下図のように矢印でTd(+)などと書かれていたりする。
あるカルテにどう考えても圧痛らしき箇所にTOPと書かれていた。いろいろ調べてもTOP=圧痛を確認するに至らなかったが,英語でtenderness on pressureという表記が多く見られることに気づいた。これの略語ならTOPとなる。しかし,tenderness on pressureを直訳すると「圧をかけたときに圧痛」ということになる。「夢を夢見る」ようなものか。d0003249_23465562.gif
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# by charttranslator | 2005-04-04 23:49 | カルテ解読のヒント | Comments(0)

辞書について

最近では電子辞書というとシャープやカシオが市販している電子手帳型のものを指すことが多いが,私にとっての電子辞書とはパソコンにインストールして用いるものである。通常の電子辞書は辞書のデータ本体とそのデータを閲覧するための検索ソフトから成っている。EPWINGという規格があるものの,ある辞書の検索ソフトでは他の辞書のデータを読めないということが一般的である。つまり,ひとつの単語を複数の辞書で検索するにはその辞書の数だけ検索ソフトを起動し,それぞれの検索窓に単語を入力しなくてはならない。コピー&ペーストできるといっても面倒である。このような面倒くささを解消してくれるソフトウェアがDDWINやJammingなどの電子辞書ブラウザである。
私はJammingという電子辞書ブラウザを活用している。このソフトはシャアウェアであり,私はもちろん正規ユーザーである。Jammingは様々な規格の辞書に対応しており,検索語を一回入力するだけで複数の辞書を調べられるため,非常に便利である。これがないと仕事にならないくらいだ。辞書本体を数えたら,ユーザー辞書も含め45個(45冊と呼ぶべきか?)であった。もちろんこの中には国語辞典など,医学に関係ない辞書も含まれているため,カルテ翻訳用に「医学+独語」という辞書セットを作ってある。

略語を検索していて「あっ,これだ」と見つかるのは「ステッドマン医学略語辞典」「プラクティカル医学略語辞典」「金芳堂医学略語辞典」が多い。金芳堂医学略語辞典は本のカバーについているマークを金芳堂に送るとCD-ROMがもらえるが,このままだとJammingで検索できないため,少し苦労してユーザー辞書形式に移植した。ただ,ドイツ語のウムラウトの処理ができていないため,ウムラウトの箇所のみ文字化けしている。また,カルテ翻訳の仕事のなかで見つけた,どの辞書にも載っていないような用語は「jammingユーザー辞書」と名付けたユーザー辞書に登録している。このブログの原稿も,ユーザー辞書のなかから変な略語をひろってきて書いている。残念なのは,昔(といっても最も古くて2年前)に“採集”した略語ではどうやって見つけたかを忘れていることである。また,「ステッドマン医学略語辞典」のCD-ROMが市販される前に独自に見つけた略語がこの辞書に掲載されていたりすると,「他の辞書には載っていないアブレ略語」ではなくなってしまう。

カルテ翻訳の仕事そのものは退屈であるが,どの辞書にも載っていない略語の意味を発見できたときは快感に近いものを感じる。一件の仕事で見つかるアブレ略語は,カルテの厚さにもよるがだいたい5~10個といったところか。苦労して意味を発見できた略語は覚えていることも多いが,数が増えてくると忘れることもある。しかしアブレ略語はすべてインデックスを付けてJammingのユーザー辞書に登録してあるため,高速で検索できる。
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# by charttranslator | 2005-03-27 10:08 | 辞書 | Comments(0)

1文字が省略される

腹式単純子宮全摘術は英語でtotal abdominal hysterectomyまたはabdominal total hysterectomyなので,略語はTAHまたはATHである。ところがこの手術はATと略されることがある。“AT”はグーグル検索ではストップ文字なので,通常検索では検索対象とならない。ストップ文字も検索対象に加えると,当然前置詞の“at”も含まれる。どちらにしてもAT=腹式子宮全摘術にたどり着くのは難しい。しかし,なぜ一番大事そうなhysterectomyの“H”を省略するのか。子宮を切除する手術は腹式単純子宮全摘術の他,広汎子宮全摘術,準広汎子宮全摘術,腟式子宮全摘術など様々な方法がある。私の勝手な推測を述べるなら,「子宮を摘出するのはわかっているけど,どういう術式?」と聞かれれば,開腹アプローチ(abdominal)で全摘(total)という意味で“AT”とだけ答えれば事足りたからではないだろうか。

同じく1文字が省略されるものに筋肉の名称がある。
TAはtibialis anterior muscleの略で前脛骨筋,GCはgastrocnemius muscleの略で腓腹筋である。いずれもmuscleのMは略語に含まれていない。
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# by charttranslator | 2005-03-21 22:33 | カルテ解読のヒント | Comments(0)

ウムラウトと漢字

整形外科のカルテでは頚椎のことをHWSと表記することがある。HWSはドイツ語のHalswirbelsaeuleの略である。本来Halswirbelだけで「頚椎」で,saeuleは「柱」なので「頚椎柱」になってしまうが,あまりこの呼び方はしない。ここでsaeuleのaeはaウムラウト,つまりaの上に2つの点がついた文字である。同様にoウムラウトはoe,uウムラウトはue,エスツェットはssと表記するのがデジタル文書の約束事らしい。一文字や二文字の略語に比べ,三文字となるとネット検索で比較的簡単に見つかることが多いが,このHWSだけをキーワードに「頚椎」にたどり着くのは難しいと思う。仮に「HWS=頚椎」という答えに近づいたとして,最後に「Halswirbelsaeule=HWS」を確認しようとしたとき困るのは,Halswirbelsaeuleのウムラウトを無視してHalswirbelsauleと表記されている場合があることだ。同じような問題は日本語にもある。「HWS=頸椎」と明記しているサイトがあったとしても,“頚椎”&“HWS”で検索した場合には引っかかってこない。
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# by charttranslator | 2005-03-21 00:44 | カルテ解読のヒント | Comments(0)

ネット検索の限界

「医学辞書や略語辞典に掲載されていない略語など,グーグル検索すればすぐに見つけられる」と思っている人も多いだろう。しかし,ネット検索ではアルファベット1文字や2文字の略語を検索するのは容易ではない。例えば,レントゲン写真のことをXPと略すことが多いが,これを知らない人が“XP”だけをキーワードに検索すると,そう,ウインドウズXPに関するサイトが山ほどヒットする。カルテの“XP”の周囲に“胸部”“所見”“陰影”などのキーワードがある場合は手がかりになるが,“SOL”“clear”“np”などのキーワードしかないカルテのほうが多い。また,“XP”では人名のイニシャルが引っかかることは少ないかもしれないが,アルファベット2文字の検索ではどうしても関係ない人のイニシャルが多くヒットしてしまう。
あるカルテで「RIに圧痛あり」という記載があった。障害箇所が肩であったため,肩あるいはその付近の解剖学的部位を示す略語であると推測できたが,肩&RIやshoulder&RIで検索すると人名のイニシャルが多く引っかかってしまい,探しようがなかった。結局,rotator interval(腱板疎部)という正解に導いてくれたのはインターネットではなく,整形外科の教科書であった。
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# by charttranslator | 2005-03-18 22:37 | カルテ解読のヒント | Comments(0)

ムンテラとマーゲンチューブ

医療業界にはムンテラという俗語がある。語源はMund Therapieらしい。Mund(口)もTherapie(治療)もドイツ語だが,ドイツ語にMund Therapieという熟語は存在しないと聞いたことがある(未確認)。俗語のスペルにこだわるのは,“ナイター”のスペルにこだわるのと同じだが,Mundの発音がムントであることから,ムンテラの語源を“Munt Therapy”と思っている人もいるようだ。この場合Therapyは英語だし,いったい何のことか分からなくなる。
“ムンテラ”は既に市民権を得て日本中で使用されていると思われるが,その語源と思われるMund Therapieは正しいドイツ語ではないのだから「手術の危険性についてムントテラピーします」と言うのは一般的とは言えない。
そういえば,関西のある地方ではアイスコーヒーが“レーコ”と呼ばれていた(今もだろうか)。おそらく冷コーヒーが語源と思われるが,関西の喫茶店でも「レーコーヒーちょうだい」というと笑われると思う。
ムンテラは出自も怪しいながら,その意味も変遷してきているようだ。もともとは「患者(あえて“様”はつけない)と会話し,患者のつらさをいろいろ聞いてあげることによって治療効果を期待する」ようだったのが,今はインフォームドコンセントとほぼ同義,悪く解釈すれば「言いくるめる」みたいなところがある。しかし,きちんと説明してあげると患者は納得し安心するだろうから,意味は大して変わっていないのかもしれない。

胃の中に入れる管は胃管または胃ゾンデ,英語でgastric tubeまたはstomach tube,ドイツ語でMagensondeまたはMagenkatheterと呼ばれている。ところが,ドイツ語のMagen(胃)と英語のtubeとを勝手にくっつけてマーゲンチューブと呼ぶ人もいる。気をつけないといけないのは,Magensondeのスペルを発音からMagenzondeと勘違いし,M-zondeやMZと表記する場合があることで,こうなると正解にたどりつくのは難しい。日本語の“胃管”も,食道全摘後に胃を細長くして食道の代わりとする再建胃管(reconstructed gastric tube)を指すこともあるので注意が必要だ。

カルテでは語源の怪しい俗語も,独語+英語の造語も略される。そう,ムンテラもマーゲンチューブもMTと略される。胃管を誤って気管に入れると通常は激しい咳嗽反射が起こるので間違いだとわかるが,反射の低下した患者ではわかりにくい。胃管の先端が気管や気管支にある状態で栄養剤を流し込むと危険である。もともと胃潰瘍で胃壁の薄くなった患者では胃管の先が胃壁を突き破ってしまう危険性もある。やはり,たかが胃管といわず「MTの危険性についてMTする」べきである。
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# by charttranslator | 2005-03-15 15:43 | 俗語 | Comments(1)

先入観が邪魔をする

ある救急搬送された患者のカルテでは,最初のページの冒頭近くにITIと書いてあった。何かの症状か徴候のことかと検索したが分からなかった。あちこち探しているうちに,ITIではなく1T1,少し丁寧に書くと1-T-1,もっと丁寧に書くとE1VTM1であることを突き止めた。グラスゴーコーマスケールの評価結果だったのである。意識のない患者が病院に到着すれば,医師はただちに意識レベルをチェックし,すぐに次の処置に移らなければならない。そのとき,カルテに「グラスゴー」だの「GCS」など記入する時間も惜しく,ハイフンすら省略する。評価の結果のみを記入すれば充分なのである。

見たことのない3文字の略語で真ん中にTがあればその両側にある縦棒はIだと思いこんでしまう。GCSの評価には0(ゼロ)はないのでO(オー)と間違う心配はないが,肉筆のカルテではIと1,O(オー)と0(ゼロ)との読み間違いに気をつける必要がある。
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# by charttranslator | 2005-03-14 22:47 | 読み違え | Comments(0)