尿道カテーテル
看護用語 正しい英語はurethral catheterだが,大抵はballoon catheterなので「バルン」と呼ばれ,balloonのlをrと間違ってBrと略されたと考えられる。 〔例〕 Br抜去,以後はポータブル(便器)で テラマイシン浸漬コメガーゼまたはテラマイシン軟膏コメガーゼの略
〔例〕 右外耳道にテラコメ挿入 鼻や耳などの狭い箇所に詰めて滲出液を吸わせるための幅の狭い薄いガーゼのことをコメガーゼまたは込めガーゼという
コメガーゼの英名は不明(packing gauzeやribbon gauzeが近い?) Kanule Wechselの略
カニューレ交換 Wechsel der Trachealkanule やWechsel der Kanuleの表記が多いが,Kanule Wechselは見られない。おそらく日本人による造語
MagenZondeの略であるが,正しいドイツ語はMagensonde
胃管 英語ではgastric tube,stomach tube 〔例〕 anemiaあるもMZからのbleeding(-) dullnessは略語ではないが,カルテでは要注意の用語である。多くは患者の主訴(cc)や主観的情報(S)に記載されている。つまり患者が訴えている症状である。
どうやら多くの医者が,「(からだの)だるさ」のことをdullnessとしているようである。 dullnessは医学英和辞典では「(打診での)濁音」とされている。これは理学的所見であって,患者の訴えではない。それに最近は打診する医者も少ないだろう。 一般の英和辞典では鈍さ,鈍感,不活発,退屈などとされ,「(からだの)だるさ」は見られない。ランダムハウスのみかろうじて,「(気分の)重苦しさ」という,患者の主観的表現ととれる訳がある。しかし,カルテ上のdullnessが「気分の重苦しさ」を示しているとは思えない。 私の推測だが,dullの発音が「だるい」に通じ,その名詞形としてdullnessが「だるさ」として用いられるになったのではないか。 そもそも「だるい」という訴え自体が曖昧である。ちゃんとした英語は存在しないのではないかと思ったが,lassitudeやlistlessnessが見つかった。しかしカルテではこれらを見たことがない。 面白いことに,研究社の医学英和辞典ではdullnessに「濁音」の記載はない。 ちなみに,dull pain(鈍痛)はdullnessとは区別され,正しく用いられているようだ。患者が「だるい痛みがあります」と言ったから,カルテにdull painと書いたのかもしれないが。 処方のところにアユとあれば,それは朝夕のことである。
カタカナの「ス」を横に引き延ばしたような記号(略語?)は「食後すぐ」という意味を示す。ただしこの「ス」記号は日本全国の医療機関で通用する記号ではないようだ。 薬の名前のあとに以下のような文字が書かれていたら,それは,その薬を「朝夕の食後すぐ」という意味である。 ![]() あるカルテに「症状はCPで改善」とあった。医学略語辞典では略語がCPとなる用語は数多く載っているがどれも当てはまらなかった。ネット検索でも同様であった。ところがカルテの後ろの方にMS冷CP200g×3Pという記述があった。そう,CPは湿布の略であった。CPの「シーピー」と湿布の「しっぷ」の音が似ているためと思われる。確かに漢字で湿布と書くのは面倒だし,「しっぷ」や「シップ」と書くと格好悪い。
一方,湿布(またはパップ剤)のことをpapと表記することがある。pap(略語ではない)を辞書で引くと「パン粥」となっている。そしてパップ剤は辞書ではcataplasmやpoulticeとなっている。つまり,辞書の上ではpap=パップ剤にはならない。もともとパップ剤は,粥状にした薬剤を布かなにかに塗りつけ,それを患部に当てていたそうなので,日本語の「パップ剤」の語源がpapであることは不思議ではない。 このあたりの語源や湿布とパップ剤との関係などに詳しいサイトがある。「パップ剤」でグーグル検索するとすぐに見つかる。
医療業界にはムンテラという俗語がある。語源はMund Therapieらしい。Mund(口)もTherapie(治療)もドイツ語だが,ドイツ語にMund Therapieという熟語は存在しないと聞いたことがある(未確認)。俗語のスペルにこだわるのは,“ナイター”のスペルにこだわるのと同じだが,Mundの発音がムントであることから,ムンテラの語源を“Munt Therapy”と思っている人もいるようだ。この場合Therapyは英語だし,いったい何のことか分からなくなる。
“ムンテラ”は既に市民権を得て日本中で使用されていると思われるが,その語源と思われるMund Therapieは正しいドイツ語ではないのだから「手術の危険性についてムントテラピーします」と言うのは一般的とは言えない。 そういえば,関西のある地方ではアイスコーヒーが“レーコ”と呼ばれていた(今もだろうか)。おそらく冷コーヒーが語源と思われるが,関西の喫茶店でも「レーコーヒーちょうだい」というと笑われると思う。 ムンテラは出自も怪しいながら,その意味も変遷してきているようだ。もともとは「患者(あえて“様”はつけない)と会話し,患者のつらさをいろいろ聞いてあげることによって治療効果を期待する」ようだったのが,今はインフォームドコンセントとほぼ同義,悪く解釈すれば「言いくるめる」みたいなところがある。しかし,きちんと説明してあげると患者は納得し安心するだろうから,意味は大して変わっていないのかもしれない。 胃の中に入れる管は胃管または胃ゾンデ,英語でgastric tubeまたはstomach tube,ドイツ語でMagensondeまたはMagenkatheterと呼ばれている。ところが,ドイツ語のMagen(胃)と英語のtubeとを勝手にくっつけてマーゲンチューブと呼ぶ人もいる。気をつけないといけないのは,Magensondeのスペルを発音からMagenzondeと勘違いし,M-zondeやMZと表記する場合があることで,こうなると正解にたどりつくのは難しい。日本語の“胃管”も,食道全摘後に胃を細長くして食道の代わりとする再建胃管(reconstructed gastric tube)を指すこともあるので注意が必要だ。 カルテでは語源の怪しい俗語も,独語+英語の造語も略される。そう,ムンテラもマーゲンチューブもMTと略される。胃管を誤って気管に入れると通常は激しい咳嗽反射が起こるので間違いだとわかるが,反射の低下した患者ではわかりにくい。胃管の先端が気管や気管支にある状態で栄養剤を流し込むと危険である。もともと胃潰瘍で胃壁の薄くなった患者では胃管の先が胃壁を突き破ってしまう危険性もある。やはり,たかが胃管といわず「MTの危険性についてMTする」べきである。 < 前のページ次のページ >
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