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sibire,shibire,Schibiregefuehl

「しびれ」や「しびれ感」という日本語は曖昧である。

長時間正座をしていると足が「しびれる」が,その「しびれ」にはぴりぴりする異常感覚,手で触るといつもの触覚よりも鈍く感じる知覚低下,さらに足を動かしにくい状態,いわば軽度麻痺が混在している。
また,患者が「しびれ」を訴えても,必ずしも上記のような混在した症状とは限らない。ぴりぴり感だけかもしれないし,知覚低下だけかもしれない。

医師は患者が「しびれがある」と言った場合,それがparesthesia(dysesthesia)なのか,hypesthesiaなのか,paralysisなのか,anesthesiaなのかをはっきりさせる必要があるだろうが,それはカルテのS(主観的情報)のところではなく,次のO(客観的情報)でくわしく調べれば良いのであって,Sの箇所には患者の言ったとおり「しびれ」や「しびれ感」と書けばよい。しかし日本語で書くのはみっともないと思う医者は,英語かドイツ語で書く。

「しびれ」や「しびれ感」を示す代表的な英単語としてnumbnessが挙げられる。
ところが英英の医学辞書でのnumbnessの本文には
Doland:anesthesia
Merriam-Webster:reduced sensibility to touch
Tabers:Lack of sensation in a part, esp. from cold.
とあり,「知覚低下」を指している。

つまり,曖昧な意味を持つ「しびれ(感)」に相当する英語はなさそうである。やはり正座という文化がないせいか? ドイツ語に関しても同様なのだろう。

カルテのS(主観的情報)のところに,「しびれ」のことをsibireやshibireと表記していることがあり,それは単に医師がnumbnessのスペル(いかにも間違えそうだ)に自信がないせいだと思っていた。実はそうではなく,その医師はnumbnessが「知覚低下」しか表さず,日本語独特の「しびれ(感)」を示す英語がないことを知っていたのかもしれない。

あるカルテでは,「しびれ」の「し」をドイツ語風にschiと表記した上に,「感」の意のドイツ語“Gefuehl”(ueはuウムライト)をくっつけて,Schibiregefuehlと表記していた。このような造語は,ネット検索でも見つけるのは難しい。
by charttranslator | 2005-08-14 16:02 | 症状


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